SDGsコラム5/17「ジェンダー平等を実現しよう」
「ジェンダー」と「平等」とは?
今回はSDGsで取り組む目標とされている17の項目の5番に該当する目標の「ジェンダー平等を実現しよう」に焦点を当てて説明していこうと思います。
この目標では「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」をテーマのもとに取り組みを行っています。
【「ジェンダー」と「平等」とは?】
ところで「ジェンダー」とはいったい何なのでしょうか。「性別」とは何が違うのでしょうか。
言葉の定義として「性別」は生まれ持った男女間の生物学的な違いを指し、「ジェンダー」は男女の社会的・文化的な役割の違いを指します。
私たちが普段何気なく生活を送っていると「男なのに∼、女なんだから∼」といった言葉を耳にする場面があります。
社会の中で長い時間をかけて積み重ねられてきた慣習や文化がいつの間にか「当然のこと」として広まり、そうした慣習や文化とは異なる行動や考え方を「普通ではないこと」として扱ってしまうようになってしまっている背景が、「男/女はこうあるべき」という言葉を何気なく使わせているのです。
男女の違い
こうした社会的につくられた役割によって生きづらさを感じたり自身の意思決定を阻まれたりする人たちがいるのが今のこの世界の現状です。
そしてジェンダーによって不利益を被るのは女性に多く見られ、世界には女性というだけで望む職業に就けなかったり充分な教育を受けることができない等、様々な差別を受けることがあります。
このように男女の違いだけで、平等に与えられているはずの権利を行使できない不平等な状況を是正し、ジェンダー差別によって苦しむ人、特に女性が社会の中でもっと能力を発揮することができ、すべての人が性別にかかわらず平等に機会が与えられる社会を作ることがこの取り組みの目標です。
日本における男女の格差
【目標に対する現状】
グローバルジェンダーギャップレポートが出す「ジェンダーギャップ指数 」によると2021年の日本における男女の格差は、156か国中120位という結果でした。
ジェンダーギャップ指数は教育、健康、政治、経済の4つの分野で男女の違いを比較したものです。日本は教育と健康の分野では男女平等とされていますが、残る経済と政治の分野に対する女性の参画では他の国に対して大きくおくれを取っています。
日本のSDGs全体の取り組みの評価が世界で17位であることを考えると、いかにジェンダー平等に対する取り組みが進んでいないのかがわかると思います。
特に評価の低い政治への女性の参画について2019年のデータ を見てみると、「衆議院:全体465人(欠員3人) / 女性議員 47人」、「参議院:全体242人(欠員1人) / 女性議員 50人」となっており、全体で10.2%と、世界の議員数の男女比率としては圧倒的に低い数値です。
女性の方が政治家を志望する人の割合が少ないとはいえ、これだけ男女で差が出ている状況のため進出の機会が平等に与えられていないように感じます。
こうした現状に対して女性が社会に進出しやすいように、ひとりひとりの意識レベルから変えていく必要があると思います。
では、世界のジェンダー平等に対する現状はどうなっているのでしょうか。
ユニセフの発表 によると途上国で望まない結婚をさせられる18歳未満の子供の数は年間1200万人にのぼるそうです。
これは一日に約3万人の女の子が自分の意志とは違った結婚をさせられている計算になります。
こうした児童婚の問題は主にアジアやアフリカの途上国で多く見られ、女の子たちの様々な選択肢を奪っています。若い年齢で強制的に結婚をされせられることにより、教育の機会がなくなったり、身体が未発達な年齢で妊娠をすることや配偶者からの虐待など身体上の危険にさらされる等、人権の侵害につながっています。
SDGsでは児童婚の問題を、国の発展を妨げる要因として撤廃を目標の一つとしてきました。ユニセフの発表によると過去10年間で児童婚をした子供の割合は4人に1人から5人に1人(約15%)に減少させることに成功しています。
しかしまだ世界にいる女の子の5人に1人は児童婚によって自分の人生の選択権を奪われています。ジェンダー平等の実現によってこうした問題によって苦しむ女の子が減ることで、社会に参画できる人口が増え、多くの途上国で起きている経済的な課題の解決の糸口になると考えられています。
【目標に対する取り組みの現状】
2021年の国連でのSDGs報告 によると
- 意思決定への女性の平等な参加は新型コロナウイルスへの対応と復興に向けて必要不可欠→しかし、男女平等には依然程遠い
- 国会議員の女性比率:25.6%
- 地方議員の女性比率:36.3%
- 管理職の女性比率:28.2%
- 女性に対する暴力はコロナ禍により深刻化
- 女性の3人に1人が生涯で1回以上の身体的または性的暴力を経験
- 最大で1,000万人の女児が児童婚のリスクにさらされる恐れ
- コロナ禍により無給の家事や育児、介護の負担が増加し女性が労働人口から締め出されている
とあり、コロナ禍の影響を大きく受けて女性のエンパワーメント達成に関しての取り組みの進捗は停滞していると言えます。
【ジェンダー平等の達成のためにできること】
ジェンダー平等を実現するために様々な団体や機関が取り組みを実施していますが、私たちひとりひとりにも目標の達成のためにできることがあります。代表的な取組の例として以下のようなものがあります。
- ジェンダーについて知る
- 寄付やボランティアをする
- 家庭や職場で話し合う
ジェンダー平等に関する課題に対して日本の取組が進んでいないのは、個人レベルでこうした問題に対して問題意識を持っておらず、当然のこととして捉えてしまっている傾向が強いからだと考えられています。
ジェンダー平等に対して取り組むことで、働きやすい職場づくりや女性の視点をビジネスに生かした新しいサービス/企業価値を創出することも見込めます。ジェンダー平等への取り組みが進んでいない日本だからこそ、取り組むことで企業の付加価値に繋がるのではないでしょうか?