SDGs8/17「働きがいも経済成長も」
「働きがいも経済成長も」
今回はSDGs17の目標の一つである8番に該当する「働きがいも経済成長も」に焦点を当ててお話していこうと思います。
この目標では「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用及びディセントワークを推進する」のテーマのもとに取り組みを行っています。
突然ですがイソップ寓話の『3人のレンガ職人』というお話をご存じでしょうか?
ある旅人が道で見かけた3人のレンガを積む男たち(ここではそれぞれA,B,Cとします)に「ここで何をしているのか?」と尋ねたところから物語は始まります。
すると男たちからは以下のような返事が返ってきました。
A「レンガを積んでるんだ。仕事だからね。毎日毎日代わり映えせず疲れるばかりでやってられないよ。」
B「大きな壁を作ってるんだ。これのおかげで家族が養えてるんだからありがたいことだよ。」
C「歴史に残る大聖堂を造ってるんだ。大変だって?とんでもない。将来ここに多くの人が礼拝に来るんだ。その光景を想像すると楽しくて仕方がないよ。」
この物語は同じような仕事内容でも個人の仕事に対する目的意識でやりがいが変わってきますという教訓を交えたお話になっています。
これは人材教育において従業員の仕事に対してのモチベーション形成などでよく使われる話なのですが、今回は少し違った見方をしてみようと思います。
物語の中ではA,B,Cの仕事の内容は同じものでしたが、彼らは自ら望んでレンガ職人となったのでしょうか?彼らは事前に仕事の目的を雇用主から聞いていたのでしょうか?労働に対する賃金などの待遇は同じだったのでしょうか?
もしAが誰かに強制されてレンガ積みをやらされているとしたら、、、?
もしAに対してレンガ積みの目的を事前に伝えられていないとしたら、、、?
もしA,B,Cが仕事に対して受け取る給料に格差があったとしたら、、、?
こうした環境だったとしたら仕事へのやりがいに差が発生するのも当然ですよね。
8番の項目の原因は?
ここから今回の本題に戻ろうと思いますが
SDGsの8番ではすべての人が働きがいのある仕事に就けるようにすることを目標にしており、すべての人がCのレンガ職人のように仕事にやりがいを持って継続できるような社会の形成を目指しています。
現在、Aのレンガ職人のように自分の仕事に対して働きがいを持てない労働環境にある、または仕事に就けないことに苦しんでいる人が大勢います。
主な原因として以下のような項目が挙げられています。
・児童労働
・長時間労働
・低賃金での労働
・ジェンダー格差
・失業率の増加
【児童労働】
国際的に仕事に就くことができる年齢は15歳以上と定められており、肉体/精神のどちらかの健康を損なう恐れのある仕事は18歳以上と定められています。
しかし世界には上記の年齢に満たない子どもが自分の意志とは別に労働を強いられている現状があります。国際労働機関の報告[i]によると5~17歳の児童労働者数は1億5200万人と言われており、世界の5~17歳の子どものうちおよそ10人に1人が児童労働をしていることになります。
子どもが労働力として駆り出され、安い賃金で働かされ、中には危険な仕事を行うこともあることはもちろん問題なのですが、児童労働が問題視されているのには別の理由があります。
それは子どもの教育の機会を奪うことです。
労働に駆り出されている時間は本来であれば学校に行ったり、教育を受けるために使われるはずの時間でした。教育を受ける時間が減ることで、大人になっても望むような職業に就くことができず、貧困から抜け出すことができずその子どもも児童労働を強いられるという負の連鎖が起きてしまいます。
児童労働の問題は長期的に見たとき、社会全体の経済価値の損失に繋がるため早急に是正すべき問題として取り組みが行われています。
【失業率の増加】
物語のレンガ職人たちは自身の仕事に対しての想いに差はありますが、最低限生活費を稼ぐための仕事には就くことはできています。
しかし世界では、現在若い世代の失業率が問題視されており、2018年時点で5.5%だった失業率が新型コロナウイルスの影響により、2020年には6.5%に上昇しました[ii]。またこの失業率がコロナ禍以前の数字まで戻るのには5年程かかると言われており、2020年代後半までは現在の失業率が継続する見込みです。
更に、15歳∼24歳の若者の失業率は全体の35%を占めており[iii]、SDGsの目標の一つである持続的な経済基盤を作ることに対して、今後の経済の担い手である若者が仕事に就くことができていない現状は改善をしていく必要があると言えるでしょう。
[i] https://www.ilo.org/global/publications/books/WCMS_575499/lang–en/index.htm
[ii] https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/12652.pdf
[iii] https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—asia/—ro-bangkok/—ilo-tokyo/documents/publication/wcms_546529.pdf
現在、Aのレンガ職人のように自分の仕事に対して働きがいを持てない労働環境にある、または仕事に就けないことに苦しんでいる人が大勢います。
主な原因として以下のような項目が挙げられています。
・児童労働
・長時間労働
・低賃金での労働
・ジェンダー格差
・失業率の増加
【児童労働】
国際的に仕事に就くことができる年齢は15歳以上と定められており、肉体/精神のどちらかの健康を損なう恐れのある仕事は18歳以上と定められています。
しかし世界には上記の年齢に満たない子どもが自分の意志とは別に労働を強いられている現状があります。国際労働機関の報告によると5~17歳の児童労働者数は1億5200万人と言われており、世界の5~17歳の子どものうちおよそ10人に1人が児童労働をしていることになります。
子どもが労働力として駆り出され、安い賃金で働かされ、中には危険な仕事を行うこともあることはもちろん問題なのですが、児童労働が問題視されているのには別の理由があります。
それは子どもの教育の機会を奪うことです。
労働に駆り出されている時間は本来であれば学校に行ったり、教育を受けるために使われるはずの時間でした。教育を受ける時間が減ることで、大人になっても望むような職業に就くことができず、貧困から抜け出すことができずその子どもも児童労働を強いられるという負の連鎖が起きてしまいます。
児童労働の問題は長期的に見たとき、社会全体の経済価値の損失に繋がるため早急に是正すべき問題として取り組みが行われています。
【失業率の増加】
物語のレンガ職人たちは自身の仕事に対しての想いに差はありますが、最低限生活費を稼ぐための仕事には就くことはできています。
しかし世界では、現在若い世代の失業率が問題視されており、2018年時点で5.5%だった失業率が新型コロナウイルスの影響により、2020年には6.5%に上昇しました。またこの失業率がコロナ禍以前の数字まで戻るのには5年程かかると言われており、2020年代後半までは現在の失業率が継続する見込みです。
更に、15歳∼24歳の若者の失業率は全体の35%を占めており、SDGsの目標の一つである持続的な経済基盤を作ることに対して、今後の経済の担い手である若者が仕事に就くことができていない現状は改善をしていく必要があると言えるでしょう。
【目標に対する現状】
2021年の国連でのSDGs報告によると[i]
・コロナ禍により2億5,500万人分のフルタイム雇用に相当する仕事が失われた
新型コロナウイルスの拡大によって経済活動が停滞し、その影響で本来であれば得ることができた仕事の機会が失われました。今回の感染症によって発生した世界経済の影響は2007年-2009年の世界金融危機の時の約4倍の雇用喪失となっています。
・景気回復は進行中
世界の1人当たりの実質GDPは2020年に大きく落ち込みましたが、2021年は上昇する見込みで、2022年か2023年には多くの国でコロナ禍以前の経済成長水準に戻る見込みとなっています。
【すべての人が働きがいのある仕事に就くために】
労働の問題は経済発展だけでなく、生活の質など様々な問題に紐づいてきます。日本でも働き方改革が推進されるなど、労働環境を是正していくための取組が政府の方針でも多く取り上げられています。
ただ単に仕事に対して働きがいを持った仕事というだけではいわゆる「働きがいの搾取」になってしまうことも起こり得ます。
労働環境が整ったうえで働きがいを持つことができて初めて、「大聖堂を造るレンガ職人」のように自分の仕事に対して熱意をもって打ち込むことができるはずです。
[i] https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/
[1] https://www.ilo.org/global/publications/books/WCMS_575499/lang–en/index.htm
[1] https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/12652.pdf