SDGs 17/17「パートナーシップで目標を達成しよう」
SDGs 17/17「パートナーシップで目標を達成しよう」
SDGs 17/17「パートナーシップで目標を達成しよう」
今回はSDGs17の目標の17番目である「パートナーシップで目標を達成しよう」についてお話していきます。
この目標では「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」のテーマのもと、課題の解決に向けた取り組みがなされています。
ここの目標が掲げられるようになった背景としては前回までに紹介をしてきたSDGs16の項目の達成を実現するためには世界の国の政府、企業、自治体、住民等すべての人たちが連携して取り組むことが必要となってくるからです。
このパートナーシップによって解決するターゲットとなっているものの例として、ODAやイノベーション技術の進展のための資金調達や、技術革新による社会的インフラの増強、持続可能な取り組みがどれだけ進んだのかを測定するための指標の開発などが挙げられます。
【資金調達】
個々での資金とは世界的な発展を進めるために、発展途上国に対して資金による支援をしていくためのものです。
そのために本目標のターゲットのひとつに「開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%に」というものがあります。
ODAとは、Official Development Assistanceの略で、訳すと政府開発援助です。
途上国の発展のために、政府および政府の関係機関による国際協力活動を「開発協力」と呼びますが、これを行うための公的資金がODAです。
このODAを元に、贈与・貸付などの資金援助や技術の提供を行なっています。
日本は特に教育分野に力を入れており、ミャンマーの初等教育を支援したり、すべての子どもが学べる学校づくりを目指す「みんなの学校プロジェクト」を展開するなどしています。
GNIとは、Gross National Incomeの略で、訳すと国民総所得です。
以前までは、GNP(国民総生産)が使われていましたが、現在はGNIが導入されています。
それでは、日本と世界のODAの状況はどのようになっているのでしょうか。
外務省が2019年に出している報告によるとGNI当たりのODAの比率が基準値の0.7%を超えているのはルクセンブルクやノルウェー、イギリスを含む5か国のみとなっています。
これに対して日本は0.29%で13位となっています。
目標値の0.7%に対して各国が取り組みを進めていますが、目標額に対してはまだまだ届いていないのが現状となっています。
2018年時点では発展途上国への投資額は5~7兆ドルが必要とされていますが、2.5兆ドルが不足している状態です。
この目標額の達成のためには政府の積極的な取組だけでなく、民間の動きが活性化していくことが必要と考えられており、そうすることで発展途上国への支援も加速度的に進んでいくと期待されています。
【技術革新】
SDGsを達成するためには、資金での支援に加えて技術を提供することも求められています。
そのためにも国と企業は連携を取りながら、目標達成に向けて必要な技術を生み出していくことが必要なのです。
SDGsという壮大なテーマに立ち向かうには、技術革新が必要で各企業の伸び代にかかっていることがわかりました。
とはいえ、民間だけの力では2030年の達成は困難な部分があります。
そこで国家間、地方自治体間との連携も必要になってきます。
これらの連携を強化するために、国連はSDGsが採択された2015年から「技術促進メカニズム(TFM)」を立ち上げました。
技術促進メカニズム(TFM)とは
ⅰ SDGsのための科学技術イノベーションに関する国連機関タスクチーム→国連システム間の強化などの調整
ⅱ オンラインプラットフォーム→科学技術イノベーションに関する情報や成功例などの普及
ⅲ SDGsのための科学技術イノベーションに関するマルチステークホルダーフォーラム→科学技術イノベーションに関連したステークホルダーが集まり、議論やマッチングを行う
の機能を持つものになります。
これは、国連事務総長が任命する10名からなる「10人委員会」が中心となり活動しています。
このように、国家、自治体、企業の垣根を超えて、補い合いながらSDGsの達成を目指していこうというのが、技術革新の趣旨です。
【進捗測定】
個々での進捗測定は、各国のSDGsの進捗を図ることを指します。
SDGsには17の目標と169のターゲット以外に、232のグローバル指標が設定されています。
これらの指標に基づき、政治的背景はなるべく考慮せずに各国の取り組みが、定量的に判断され、国連広報センターの「持続可能な開発目標報告書」にて毎年発表されています。
この達成度をまとめるには、各国のデータを入手することが必要ですが、途上国によってはデータを提供できない場合があります。
その理由の1つに、出生届を提出しないケースがあることが挙げられます。
世界には出生登録がされず、公式に認められていない5歳未満の子どもが2019年時点でおよそ1億6,600万人(全世界の5歳未満の4人に1人)おり、特に途上国では2人に1人の出生登録がされていません。
そのことで、国家の目には映らない存在になってしまい、保護したくてもできない、数値としても把握できないという問題があるのです。
途上国には他にも多数の課題があり、データを提供できない現状があります。
今後、途上国の開発を進めると同時に、これらのデータを入手できる環境へと整備していかなければなりません。
【目標の達成度】
2021年度の国連広報による報告によると
・ODAの総額はドナー国のGNIの0.32%に相当→目標値の0.7%には届いていない
・低・中所得国への送金フローは2019年水準の1.6%減(5,400憶ドル)
・低・下位中所得国の63%がコロナ禍の課題に対処するためデータ・統計整備に向けた追加資金融資を必要としている
とあり、目標達成のためには更なる取組が必要とされています。
【私たちにできること】
こうした課題に対して企業が取り組む中で注目されてきているのが「ESG投資」です。
ESG投資とは「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字を取ったもので、それぞれの項目に対して具体的に取り組みを行っている企業に対して投資をしていく考え方のことです。
今までの企業に対する投資はただ単に利益が出ているかどうか、という財務的な情報で判断をするのが普通でしたが、こうした財務情報だけでなく「環境に対してよい活動をしているか」、「地域コミュニティや従業員に対して良い企業か」「市場に公平性が確保されているか」といった非財務情報にも重点を置くことで、長期的に利益を創出することができる会社に投資をするための指標となっています。
2006年に当時のアナン国連事務総長がESG投資を組み入れるPRI(責任投資原則)を提唱して以降、世界的にESG投資に取組む機関投資家の数も運用資産残高も増え続けている為。
またSDGsが国連で採択された2015年には、世界最大規模の資産運用基金である私たち日本の、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もPRI(責任投資原則)に署名したことで、目先の利益追求ではなく、持続可能で長期的に社会にとって利益を産むことのできる企業と投資家のパートナーシップのあり方がより一層重視されてきています。
中小企業も個人も国も団体も関係なく、それぞれがお互いの強みを活かし、パートナーシップを組むことでSDGs実現の為に私たちができる可能性を大きく拡げていくことができるはずです。