紙のアップサイクルで
循環型社会に貢献していく。
山陽製紙株式会社
2021年7月30日
PELP!は、オフィスなどで不要になったコピー用紙をアップサイクルするサービス。PELP!会員になり、コピー用紙を専用の回収袋に詰めて宅急便で送ることで、100%再生紙としてリサイクルされます。さらに、その再生紙は封筒やノートなどのオフィス用品として加工され、再び使用することができます。
これは従来の製紙業にはなかった発想でした。モノをつくることから視野を広げ、“紙を捨てずに、循環していく”というシステムそのものを、ビジネスモデルとして成り立たせるという、新たなチャレンジでした。
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風合い豊かな紙に生まれ変わり、
封筒や名刺などとして再び使われるPELP!会員は、“紙を捨てずに、再び利用できる”という行為に価値を見出し、それがPELP!を利用するインセンティブになっています。KAMITORE(カミトレ)というトレースシステムもあり、自分が送った紙がどれぐらい再生紙になったのか、環境への貢献度はどのぐらいかなどをWEB上でチェックでき、「紙を捨てずに循環させたい」という行為に寄り添ったサービスが設計されています。
SDGsの目標11「つくる責任 つかう責任」で掲げられているのは、持続可能な生産と消費のカタチの実現です。PELP!は、そのカタチをSDGs誕生以前から提示し、広げてきました。PELP!に共感し、利用したいという会員数は年々増加し、2021年6月時点で200社以上。PELP!は、SDGsがめざす大量生産・大量消費モデルからの脱却を促し、「紙との関わり方」を変えようとしています。 -
工業用クレープ紙のアップサイクルから生まれたピクニックラグ“crep(クレプ)“
PELP!以外にも、循環型社会への貢献をめざし、さまざまな事業や取り組みが行われています。電線などの包装に使われる工業用クレープ紙をアップサイクルしたブランド、“crep(クレプ)”で紙製レジャーシート「ピクニックラグ」などを展開。再生可能エネルギー(FIT)の使用により、RE100の中小企業版である再エネ100宣言RE Actionに参加しているほか、使用した水は活性炭ろ過方式の排水処理設備を使って高度排水処理し、きれいな水にして還しています。循環型社会をめざすために、SDGsの考え方からバリューチェーンの見直しも行われています。
「紙をつくる」だけではなく、
「紙をめぐらす」ことをサービスに
山陽製紙が「循環型社会への貢献」を掲げたのは、創業50周年を迎えた1980年ごろでした。次の50年、つまり創業100周年を迎えたとき、世の中や自社がどんな姿であるべきか。いわばSDGsでも重要とされている、未来の起点から現在取り組むべき施策を考えるバックキャスティング思考がスタートでした。
主力である工業用クレープ紙の生産が右肩下がりになり、一方で、製紙には月2000トンもの水が必要になり、紙の乾燥にも大量のエネルギーを消費していました。「この状態は未来のあるべき姿ではない、自然からの恩恵がなければ成り立たない製紙業だからこそ、もっと環境にやさしい会社にならなければない」と大きく舵を切ったという原田社長。
そこから循環型社会をめざす挑戦がはじまります。特に大きな転機になったのが、スウェーデンでの研修でした。スウェーデンでは「ビジネスにならないエコはありえない」という考え方が当たり前で衝撃を受けた」と原田専務。さらに、モノを売るのではなく、モノの機能をサービスとして売ることで、大量生産・大量消費ではなく必要最低限の生産と消費を可能にする「サービスサイジング」というビジネスモデルに大きなヒントを得たと言います。
それが「紙をつくる」のではなく、「紙をめぐらす」ことをサービスにするPELP!へと結実していきました。
PELP!は当初、カミデコというサービス名でスタートするも、わざわざ専用の回収袋を購入し、コピー用紙を送ることに怪訝な顔をする方が多かったと言います。しかし、多くの顧客が不合理だと考えることを、サービスの要として、リブランディングを実行。
PELP!として生まれ変わることで、その価値がより伝わるようになり、不合理だった部分がエシカルな消費を求める顧客のニーズにフィットし、PELP!のファンが続々と生まれていきました。同時期にSDGsが定められたことで、PELP!をSDGs達成に貢献する事業として明確に位置づけ、さらに利用者が広がっていきました。
社会や環境、ビジネスへの影響
■新たなパートナーシップが続々と生まれ、商品開発での共創が活発になった
■エネルギー消費を見直すことで、経費削減につながっている
■SDGsをきっかけに、循環型社会への社内意識がさらに高まった
PELP!をはじめとしたSDGsへの取り組みによって、環境負担の軽減や、省エネルギー・再生可能エネルギー転換による経費削減、従業員の環境意識の高まりなど、社会や環境、経済の3つの分野いずれにおいて良い影響が現れています。その中でも最も大きな変化といえるのが、パートナーシップの広がりです。
「紙の循環」をめざすという山陽製紙の考え方に共感し、デザイナーをはじめとしたクリエイターとつながる機会が増加。これにより、新たな共創が続々と生まれています。従来では出会えなかったようなプロフェッショナルは新たなアイデアをもたすことが多く、商品開発の現場には可能性に満ちあふれた雰囲気があるようです。
原田社長・原田専務は、この体験から、SDGsが新たなパートナーシップを生み、それがSDGsの達成させるためのイノベーションを生むことを実感されたと言います。
そこで、目標17「パートナーシップで目標達成を実現しよう」の達成をめざし、PELP!パートナーミーティングをスタート。PELP!会員同士がつながり、パートナーシップを築くことで、さらに共創が生まれ、SDGs達成につながるのではないかと考え、会員同士が交流できる場をつくっています。
「分野や職種、立場が異なっても、SDGsを共通言語として根っこでつながることができます。互いに響き合い、つながっていくために、山陽製紙がSDGsパートナーシップのハブになっていきたいです」と原田社長。
2030年には、紙の循環が当たり前の社会に
山陽製紙は、2028年に創業100年を迎えます。その時に「紙の循環」が当たり前の社会になっていることが、山陽製紙がめざしたい未来です。PELP!会員数は伸びているものの、利用者のさらなる増加がこれからの課題です。会員数1万社をめざし、PELP!のスケールアップを図り、SDGs達成に貢献していきたいと言います。
山陽製紙では毎年、自社の理念への意識を高めるための「理念祭」が行われてます。そこでは、従業員が中心になり、理念を学ぶためのイベントや勉強会などを企画。ここ3年間はSDGsを主要なテーマとして掲げられています。従業員一人ひとりがSDGsを自分事してとらえ、従業員からはじまるSDGs貢献の動きを会社全体で応援していくことも、山陽製紙がめざす姿です。
また、SDGsでつながることによって素晴らしいアイデアが生むからこそ、ライバルでもある同じ製紙会社とのパートナーシップや、自治体や地域住民とのパートナーシップも重要と考え、今後がそうした関係づくりも強化していきたいと言います。
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VOICE
つくる人も、つかう人も、手を取り合い
持続可能な社会をめざしていきたい。
わたしたちが「循環型社会への貢献」を掲げた原点は、「紙を大切にしたい」というシンプルな気持ちでした。資源は有限であるからこそ、つくる人も、つかう人も、責任を持ちながら資源のことを考えていかなければならないと思います。PELP!は、そのきっかけになり、循環型社会に貢献していく一歩になってほしいです。
SDGsには「誰一人取り残さない」という素晴らしいメッセージが根底にあります。わたしたちはこのメッセージを常に大切にし、こらからの企業活動を行っていきたいです。
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企業概要
会社名 山陽製紙株式会社 事業内容 昭和3年創業。紙でエコする製紙会社。古紙をはじめ様々な廃棄物を加工し紙資源へとリサイクルすることで、循環型社会の実現をめざす。 所在地 〒590-0526 大阪府泉南市男里6-4-25 電話番号 072-482-7201 FAX番号 072-482-7204 ホームページ https://www.sanyo-paper.co.jp/