美容師ができることは、髪を切ることだけじゃない。美容師と社会を繋ぐハブステーション
一般社団法人 国際毛髪皮膚科学研究所
2021年10月21日
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セミナーの様子
美容師や美容業界が、 もっと社会や地球と共に活躍できる未来を
美容室などで使用される多くのヘアカラー剤には、PPD(パラフェニレンジアミン)など、環境や人体に悪影響を及ぼす化学物質が含まれており、毎年大量に廃棄されているため、環境汚染が問題視されています。
また、シャンプーやトリートメントは仕上がりの良さを重視し、肌に刺激の多い成分がふくまれたものが多く、「美しさ・心地よさ」というポジティブなものを求める人々に対して、身体的なストレスを与えてしまう矛盾した状況が生まれています。
日本には約24万件の美容室があり、その数はコンビニの約4倍です。
美容室が与える社会や人々への影響は、決して少なくありません。
そのような状況を変えるために、IRIHASSは全国の美容師に対して、地球環境の現状や、人体に与える様々な影響といった美容業界が与えている実は知られていない悪影響を伝えると共に、人と環境に配慮された必要な知識から道具の選び方や使い方まで、協力企業と共に提案しています。
また、仕事やストレスとの向き合い方など、メンタルケアに関する情報提供も同時に行うことで、人々の心や体の環境、健康などに、そして、地球環境にまで目を向けられる余力を生み出そうとしています。 -
被災地でのボランティアカット
協力団体「CONCENT」と共に、美容師が社会と繋がる場をつくる
IRIHASSの活動は、「美容師や美容業界の社会参加・社会貢献」も大きな柱となっています。
IRIHASSは、協力団体「CONCENT」と共に実施している、美容による社会貢献活動を、セミナーを通して全国の美容師に伝えています。
社会が抱えるさまざまな問題や、その問題に対して美容師が起こせるアクションを伝えることで、美容師が「自分のスキルを活かして、世の中に貢献できること」を考え、実行する機会をつくっています。
たとえば、児童養護施設での活動では、髪が伸びてしまった保護児童たちのボランティアカットを定期的に行っています。児童養護施設の多くは予算が限られており、どうしても児童のヘアケアについては後回しにされてしまいがちなため、全国から美容師を募り、子どもたちのヘアカットやケアをしています。
美容師たちが「自分たちのスキルって、こういう形でも活かせるんだ」と気づく機会をつくることで、美容師が職場から外に一歩踏み出し、広い社会とつながるきっかけをつくっています。 -
大好きな自然を守るために
好きなものがなくなってしまう社会を、 自分たちの手で変えていきたい
IRIHASSの代表理事である本山 典子さんが、この取り組みを始めたきっかけは、協力団体CONCENTの代表との出会いでした。
「自分が働く美容業界や、生活を営んでいる社会や地球に対して、どのように貢献できるかをとても真摯に考える方で、深く共感しました。コンセントの代表はサーフィンを、私は自然と触れ合うことがとても好きなのですが、地球環境が壊れればそんな自然との関わり方もこの世からなくなってしまいます。そのような状況を、自分たちの業界から変えていきたい。
一人だと無理だから、仲間をつくっていきたい。そんな思いを聞き、ぜひ共にアクションを起こしたいと思いました」。また、ヨーロッパで体験した、お金やコストに対する日本とは違う考え方も、きっかけのひとつでした。
2007年ごろ、本山さんがノルウェーに滞在していたとき、使い捨てのアメニティグッズをホテルから持ち帰ろうとすると、スタッフから「持って帰っちゃダメだよ。お金支払ってね」と注意されました。
日本人からすると、「そんなものにお金がかかるの?」と思うようなものにも、対価を支払う。それはサービス精神が希薄なのではなく、何かを生産する際のコストを社会がしっかりと意識しているからです。「最近では日本も、環境問題への配慮からレジ袋が有料化されましたよね。同じようなことが、すでにノルウェーでは行われていました。そのような価値観に触れて、社会と人々の関係性を深く考え始めました。他にもドイツで目にしたリユース文化など、自分や社会を見つめ直すさまざまな出会いがありました」。
人・社会・地球に対して、自分や美容業界ができること。何かをつくり出すコストと責任。社会と人々の関係の在り方。
IRIHASSの取り組みは、そのような考えをアップデートしてくれる出会いから始まりました。
社会や環境、ビジネスへの影響
■美容に関わる人たちが、職場以外の社会とつながりを持てるように
■協力メーカーや関わる企業の社会貢献意識の高まり
■SDGsという共通目標によって広がるつながりの輪
美容業界の新たな在り方を模索しています
多くの人々が、自分の職場や家庭以外の社会とつながる機会が少ないように、美容師として働く方も、自身が勤める店舗や美容業界の外と関わりを持つことはあまり多くありません。児童養護施設のボランティアカットに参加した美容師の方から、次のような声があがっています。
「養護施設の子どもたちと接することで、『誰かに傷を負わせる』ということが、どんな状況を招いてしまうかを、少しだけ知ることができました。自身の子どもへの接し方や、お客様を含めた人とのコミュニケーションについて、考える機会になりました」。
IRIHASSは、美容院や美容業界の中にいるだけでは見えないものを、美に関わる方々に伝えることで、「よりよい社会を創ろうとするアクション」を、少しでも増やそうとしています。また、前述のようなボランティアに参加した人の声や、ボランティア先の声を協力してくれた企業に伝えることで、企業の社会貢献に対する意識も高まっています。「自分たちの行動が、誰かの役に立ったんだ」と協力企業の人々が実感することで、また次のアクションが生まれる。そんなポジティブなサイクルが回り始めています。
IRIHASSは「人と美と社会をつなぐハブステーション」となることを掲げており、SDGsへの取り組みによって、人々とのつながりが広がったと本山さんは言います。
「私たちの取り組みやビジョンは、さまざまなつながりがあってこそ実現できるものです。SDGsという共通目的があることで、美容業界や福祉、環境問題などに関わりのなかった企業ともつながりを持てるようになり、新しい一歩を踏み出すことができました」。
自分や社会が見過ごしているものに、 人々が気づけるきっかけをつくる
SDGsなど新たな目標や価値観が普及し始めていますが、今の社会や人々は、まだまだ物質的な豊かさばかりに目を向けがちだと本山さんは言います。物質的な豊かさにとらわれた社会だから、企業が人材を浪費してしまい、充実した生活や、心を休ませられる暮らしを送れない人々が増えてしまう。そんな状況に対して、IRIHASSはアクションを起こし、「自分が本当に欲しいものは何なのか」、「社会や未来にとって必要なものは何なのか」を立ち止まって考える人々を増やそうとしています。
「今、目の前に見えるものだけが全てだと、考える人が多いような気がしています。もちろん、安心して暮らすためには、お金などの物質的な豊かさは必要不可欠です。でも、それと同じくらい、心を満たす豊かさも大切だと私は思います。しかし自分1人だけでは、仕事や家庭のことに一杯いっぱいで、目の前の生活以外に目を向けるのは私も含めて難しいです。だからこそ、IRIHASSという組織がさまざまな人・もの・コトをつなぐハブとなり、自分や社会が見過ごしているものに、人々が気づけるきっかけをつくっていきたいです」。
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VOICE
「自分が今できること」を、肩の力を抜いて考える
「自分は地球の一員なんだ」って、忘れてしまいがちですよね。全体の事柄は一部に影響し、一部の事柄は全体に影響します。そのようなことを考え始めると、「いいことしなきゃ、凄いアイデアを思いつかなきゃ」とついつい肩ひじを張って難しく考えてしまいますが、もっとシンプルでいいと思います。
自分が今どこに住んでいて、どうやって生活しているのか。何か少しでも未来のためにできることはないか。肩の力を抜いて、「自分が今できること」から始めてみるのが、案外SDGsを事業につなげる近道なのではないでしょうか。
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企業概要
会社名 一般社団法人 国際毛髪皮膚科学研究所 事業内容 「人」と「美」と「社会」をつなぐハブステーションとして、国内外のさまざまな専門家と協力し、各種研究、企業アドバイス、コンサルティング、セミナー活動などを行っている。 所在地 〒141-0021 東京都品川区大崎3-10-60 電話番号 03-6841-0975 FAX番号 ホームページ https://www.irihass.com/